鎖肛(直腸肛門奇形)に関する情報と手術用鏡視下筋刺激装置について

2023.12.18

コラム

生まれつき、正常な状態で肛門が形成されない病気、「鎖肛」。日常的に見慣れない病名ですが、読み方は「さこう」と読みます。

※近年では「直腸肛門奇形」と呼ばれることも多く、本コラムでは全体を通し、鎖肛(直腸肛門奇形)と記させていただきます

 

鎖肛(直腸肛門奇形)にはさまざまな病型があり、その後の治療方針・手術方法を確立するためには正しい病型診断が重要であると共に、特に手術においては直腸と肛門の境目を特定することが大変重要になります。

今回は『鎖肛(直腸肛門奇形)』について、その症状や診断、そして治療や手術について基礎になる部分をお伝えすると共に、鎖肛(直腸肛門奇形)内視鏡下手術用に国内で初めて承認を取得した【鏡視下筋刺激装置(AM-140)】に関する情報をお伝えします。

鎖肛(直腸肛門奇形)とは?

鎖肛(直腸肛門奇形)は、生まれつき肛門の形成が正常に進まない先天性の疾患であり、肛門が完全に閉鎖されているケースや、直腸が本来とは異なる場所と結合しているケースなどが含まれます。

この病気は、出生時、おおよそ数千人に1人の割合で発生し、先天性の消化器系疾患の中では最も頻繁に見られます。

 

本来、肛門は摂取した食物が消化器官を通り体の外へと排出される「出口」にあたる部分で、鎖肛の状態は排便という日常の基本的な行動に大きな影響を与えるため、新生児期から日常生活に問題が生じるため新生児期の緊急手術も必要になる病気です。

 

鎖肛(直腸肛門奇形)の原因は、胎児期の消化管の発生過程で直腸や肛門が正しく発達しないことに起因しています。

 

鎖肛(直腸肛門奇形)の治療や重症度の評価においては、肛門からの排便に関与する筋肉である恥骨直腸筋との位置関係が重要であり、この位置関係に基づいて、鎖肛は高位、中間位、低位の3つに分類されます。

 

鎖肛(直腸肛門奇形)の発生には生活習慣や遺伝性疾患が直接関与するわけではなく、複数の遺伝子異常が相互に影響しあうことが一因とされています。

また、VACTER症候群の一症状としても鎖肛が見られることがあり、これらの要因が複雑に絡み合い、鎖肛(直腸肛門奇形)の発生に寄与していると考えられます。

鎖肛(直腸肛門奇形)の症状と診断

症状と診断において、出生直後に肛門がないことから確認されることが一般的です。

肛門が完全に閉鎖されている場合、新生児は排便ができません。そのため、母乳やミルクを摂取しても便が排泄されず体内に溜まってしまい、嘔吐や腹部膨満などの症状が現れます。

 

なた、肛門が閉鎖されているだけでなく、異なる部位に開口している場合もあり、直腸が陰嚢に開いているケースや、膣や膀胱、尿道などとつながっているケースも見受けられ、このような場合には尿に便が混在していることから判明することもあります。

 

鎖肛(直腸肛門奇形)の診断は主に新生児期に行われることが多いですが、便の排出が細、便秘気味、などの症状から幼児期以降に発見されることもあります。

 

鎖肛(直腸肛門奇形)の検査と診断では、レントゲン写真や造影剤を用いた画像検査、超音波エコー、CTなどが利用されます。特に、直腸の開口と恥骨直腸筋との位置関係の把握が重要であり、レントゲン写真では直腸の盲端部位と筋肉の位置を確認します。

造影剤検査では、直腸がどこに開口しているのかや、膀胱にも造影剤が入っていくことが認められるかどうかが観察されます。

骨盤部CTも、恥骨直腸筋の発達状況を確認し、手術のタイミングを判断する重要な情報となります。

 

これらの複数の検査を通じて、鎖肛(直腸肛門奇形)の診断と治療方針の決定が行われることが一般的です。

鎖肛(直腸肛門奇形)の治療と手術、そして手術で活用が期待される【鏡視下筋刺激装置(AM-140)】について

鎖肛(直腸肛門奇形)の治療はまず『正常な排便機能の確立』を目指して行われます。

直腸が肛門括約筋とどの位置関係にあるかで治療や手術のタイミングと内容を検討していきますが、「低位型」の場合、新生児期早期に外表面から孔を開け、排便の通り道を形成し、その後早い段階で肛門の形成術を行います。

一方で、中間位や高位型では直腸の盲端が高い位置にあるため、適切な排便機能のために必要な筋肉が発達していないことが早期の手術では課題となります。

そのため、新生児期には人工肛門を設けて便の排泄を促進し、体の成長と共に筋肉が発達するのを待ち、時期を見計らって根治的な肛門形成術を行います。

 

鎖肛(直腸肛門奇形)は手術後も、日常生活に支障がない排便習慣を確立するためには相当な訓練が必要と言われています。

 

なお、近年の鎖肛の手術においては、鏡視下筋刺激装置の導入が期待されています。

小児領域における腹腔鏡下手術の普及、そして高位型、また中間位型においても腹腔鏡下手術が拡大しつつある今、この装置は、手術中に直腸周囲の筋肉に電気的な刺激を与え、直腸と肛門の境界を明確にすることで神経損傷を最小限に止め、また、術後の良好な排便機能が獲得できる可能性を高めることに寄与します。

 

鎖肛(直腸肛門奇形)手術は、単に救命や排便機能(肛門)を作ることのみが目標とされるのではなく、おしりからしっかりと排便のコントロールができるようになることに重きをおかなければなりません。

それは、患児が日々成長し日常生活を送る中で、健常な肛門をもつ子供と何ら変わらず支障を感じることなく快適に過ごし、そして一生涯『約80年間使えるお尻』を獲得するためです。

鏡視下筋刺激装置は、鎖肛手術の正確性と安全性を向上させ、より良い予後を患児に与えることが期待されています。

 

■【鏡視下筋刺激装置(AM-140)】について

当社の【鏡視下筋刺激装置(AM-140)】は、直腸と肛門の境目を明確に特定するための鎖肛手術用鏡視下筋刺激装置としては国内で初めて認証を受けた製品です。

また、フットスイッチの採用により術中の足元での操作を可能にし、医師が手元の患児に向き合い、手術に集中できる環境を作り出した製品です。

 

 

 

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まとめ

身体の機能に不足なく生まれてくることが当たり前のように思われていることは否めません。

しかしながら、「あって当たり前」「動いて当たり前」と思われる機能・器官に疾病を抱えて生まれる新生児は多くいるのが現実で、今回ご紹介した鎖肛が数千人に一人という確率の高さであることからもお分かりいただけると思います。

鎖肛(直腸肛門奇形)患児を支えるご家族、そして何よりも、生まれてきたお子さん自身が成長過程で受ける負担を少しでも感じることが少なくなるよう、今回ご紹介した【鏡視下筋刺激装置(AM-140)】がより多くの方に認知され、広く普及していくことを願っております。

 

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